『方丈記』を読み直す、その1『色即是空』
行く川の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみ
に浮かぶうたかた(泡、渦)は、かつ消えかつ結び久しくと
どまることなし。
世の中にある人とすみかと、またかくの如し。。。。。
この文節は般若心経の
色即是空
の具体的表現である。色は万物、物体のこと、空は運動や
変化のこと。運動や変化は表現しようもなく、静止と不静止
する。
を悟った。そしてその神髄の例として鴨長明は鴨川の水面に
浮かぶ『うたかた』の運動と変化を述べた。
科学が未発達のそのころ、鴨長明が言えるのはそこまで。
後は、人生のはかなさを例として述べる。今の仏教の大部
分が同じことをやっている。すなわち『世の中にある人の
はかない運命』について、『またかくの如し』と。
このはない運命として鴨長明は長々と自然災害のこと
を列挙する。
治承4年卯月29日のころ、御門京極のほどより、大なる
つじ風起こりて。。。。家の内のたから、数をつくして空
にあがり。。。
これは台風、熱帯性低気圧、雷雲などにともなう大規模
なつむじ風、今の気象学で言う『塵旋風』であったかもし
れない。しかしこれは極めて大規模な被害であったので竜
巻であったかもしれない。なにしろ『富める家も貧しき家
も、何もかもすべて空に舞い上がった』というのだから。