バンクーバー新報つづき

夏場の暮らしをカナダで  早稲田大学名誉教授理学博士の大槻義彦教授は、多数の論文を発表、著書を出版する 傍ら、数々のテレビ、ラジオにも出演し、お茶の間でも知られる科学者の一人である。その 大槻教授バンクーバーと出会い、1997年にブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市 メトロタウンのコンドミニアムを購入した理由は気候の良さだった。そしてもう一つの理由 は大好きなゴルフにある。ゴルフがしたいために定年を待たずに64 歳で早大を退職し「、自 分が書いてベストセラーになったのもゴルフの本」と語って大槻教授は講演を始めた。こ こではその講演内容の一部をお届けする。  なお大槻教授は本紙で同テーマを詳しく語った科学コラムを10回連載(2017年 8月 17日号〜2018年5月17日号)。バンクーバー新報ウェブサイト(www.v-shinpo.com) で閲覧できるよう記事中に掲載コラム名を示しておく。


2000 年以降、日本は科学技術で世界一   「日本の科学はこれからダメになる」とインタビューで答える人たちがいるが、それは昔 から言っていることで信じてはだめ。2000年以降、日本人でのノーベル賞の科学三賞(物 理学・化学・生理学/医学)の受賞者は29人。うち2人はアメリカ籍。アメリカのほうがノー ベル賞科学三賞の受賞者は多いが、人口一人当たりにすると日本がトップです。
宇宙の解明に新たな地平を開いたニュートリノの発見  では素粒子の話から。現在わかっている17の素粒子の中の6種類の素粒子の発見に寄 与したのが日本人。小柴先生(小柴昌俊氏)が超新星の爆発の時に地球に降ってきたニュー トリノ素粒子の一つ)を初めて観測して2002年にノーベル物理学賞を受賞しました。小 柴先生はその年の3月に定年の挨拶をする予定だったんです。しかしそれより6日前に超新 星の爆発が起こって、そこからニュートリノの発生を観測しちゃったんですね。もう大変な
騒ぎになりました。今ではニュートリノの測定により新しい天体を観測しようと「ニュート リノ天文学」というものが存在しています。  その後、小柴さんの弟子たちが東京大学の施設のカミオカンデニュートリノには三つ のタイプがあると発見し、ノーベル賞の候補になりましたが、受賞する寸前で小柴さんの弟 子....