ノーベル賞病?Journal of the Japan Skeptics の記事が注目集める

 

通常Skepticsは懐疑論者、無神論者のことであ

るが、実際には当風流に言えば『反オカルト』

ということです。この団体は30年以上も昔

私とか副会長の高橋昌一郎教授が中心となって

作られました。

 この団体の発行するジャーナル最新号に

   『ノーベル病:知性が不合理に陥る病』

という記事が出て注目されています。筆者は

リリエンフェルト、訳者 高橋昌一郎、安部

夏由美。

 何しろノーベル賞受賞者批判ですから高度

な科学用語がでるし、心理学、医学用語、哲

学用語が出るし論理構造も微妙なところが多

く難解な文章ですがお二人の訳者は見事な、

分かりやすい訳文となっています。(この

ジャーナルについてはご案内を文末に書き

ます)

 さてそのノーベル賞病ですがノーベル賞

推薦委員を6年間やった私として、これが本

当なら座視できません。そこでまず、どれくらい

の数の科学者がこの『ノーベル賞病』にかかって

いるかを調べます。このジャーナルに取り上げら

れたノーベル賞病は8名ですがそれにるいした言動

も加えると12名です。

 ところでこれまでノーベル科学3賞の受賞者は

およそ1000人です。この1000人のうち

知的不合理に陥った科学者は12÷1000=

1.2%となる。この不合理病は表にに出ない

場合もあるからこの2倍としても2.4%でしょうか。

 実はこの数字は40年ほど前に東大教養学部生協

が学生に行ったアンケート調査でオカルト思考者は

およそ3%でした。理工系ならもっと少なく2%ぐ

らい。私が早稲田大学理工学部学生にやったアンケー

トでもオカルトは2.2%でした。

 なんと、ノーベル賞病は普通の人達の病だったの

です。高度な理工系知識エリートがとくに陥る奇気

ではない。この点、このリリエンフェルトの大きな

誤解をしたのです。

 たしかに湯川秀樹先生は晩年仏教に深入りして『も

はや物理学の世界は自分の世代で知り尽くした。あと

は広大な仏の世界という未知の世界がある』と

言って私を怒らした。それから何年もしないうちに、

クオークという素粒子素粒子が発見されたのです。

 ニュートンですら晩年『神が存在することを示す

方程式』を発表して世のひんしゅくを買いました。もち

ろんケンブリッジ大学のトリニティカレッジ前のニ

ュートンのモニュメントにはこんな『業績』は書か

れていない。ところがロンドンの有名なウェストミ

ンスター寺院のニュートンの墓には『神の存在を証

明した科学者ここに眠る』と書いてああります。

 このようにたった2.4%の不合理な人でもノー

ベル賞をとればその言動が注目されマスコミを驚か

すのです。その意味で知性を特別な能力と仮定した

本論文の著者リリエンフェルトも同じ『知性の不合

理』に陥ったと言えるかもしれない。

 人は多くの場合その世界観は変化します。

ノーベル賞受賞者も同じ。たしかにノーベル賞受賞

理由の科学的業績を達成した時点で本人は確かにその

知性は合理的で知的なものでした。しかしわずかなが

らこの合理的知性は変わるのです。実際にはもちろん

わずかな人たちですが。

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  港区港南3-6-21-380情報文化研内

  ジャパンスケプティックス事務局

注2)本文章はジャパンスケプティックスジャーナル誌

  への投稿記事ですが広く本ブログへも転載しました。