本年のノーベル医学生理学賞も物理学賞に日本人受賞はずれ。そのうらのウラの話

 ノーベル物理学賞

 まず二つの異常がある。一つは発表時刻が予定

より遅れに遅れて記者やライブで見ていた世界中

の人達をイライラさせたこと。もう一つは今年は

物性、その他一般物理分野のはずだったのが、今

年はこの傾向をくつがえし、今年も素粒子、宇宙

分野になってしまったこと。

 この異常はこれまでも多くあったのでそれ自体

はとくに問題にすべきことではない。ただ、この

おかげで最有力候補の東大の香教授の『光格子原子

時計』が受賞を逃した。

 このような今年のノーベル物理学賞のハプニング

には何か原因があるはずだ。それは受章者に筆頭

に挙げられたペンローズに事情である。ペンローズ

はホーキングとともにアインシュタインの一般相対

論によってブラックホールの存在、ブラックホール

の性質、ブラックホールの終末を解明した。その他

数多くの理論物理での発見、数理物理の功績がある。

 これまでノーベル賞をもらっていなかったことが

異常なのだ。もちろんペンローズは高齢である。多分

89歳のはず。しかも最近体調をくずしている。今、

今年この時、ペンローズノーベル賞を与えなければ

悔いが残る。ホーキングのノーベル賞の悔いと同じ。

 そこでノーベル賞委員会は発表まで遅らせて、しか

も物性分野を無視してペンローズ受賞を決定したのだ。

もちろんこのこと自体は良い配慮で歓迎すべきことで

ある。

 しかもこんなことはたびたび過去にあったこと

なのだ。南部先生のノーベル賞も高齢、体調を壊して

いる、という情報であわてて受賞となった。ロシアの

世界的に超高名な物理学者ランダウの場合もそうだっ

た。長くノーベル賞候補の噂がありながら受賞はなか

った。ところがランダウは交通事故に遭ってひん死の

重症を負った。あわてたノーベル賞委員会はランダウ

死亡直前に授与を決めた。

 とかく理論物理学の分野はノーベル賞受賞が遅れる。

理論物理は数理物理のことが多く、結果を実験的に裏

付けるのに時間がかかる。実験できないような結果も

多い。