驚くべき草花の能力

歳をとってきたせいか、これまで見向きもしなかった

野の草花に異常な関心をもつようになった。これまで

は講演などをした後花束をいただくと、これを自宅まで

持ち帰ることもおっくうで、途中でだれかにあげたり、

ごみ箱に捨てたりしていた。

 今では町の花屋さんで花束を買うことも多くなった

ので、昔の自分のむすいぶりにあきれてしまう。しか

し花屋さんの花は何かわざとらしい美しさ、人工的な

華やかさがあってすぐ飽きてします。ふと気がつくと

那須の我が家の崖にそそと咲く草花が山ほどあった。

 そうだこれはアノ乞食俳人山頭火の世界なのだ。

    落ち着いて死ねそうな草萌ゆる

    ゆうぜんとしてほろ酔えば雑草そよぐ

    歩けばかっこう急げばかっこう

    笠にとんぼをとまらせて歩く

 今の時期とくに咲いている崖の草花は『日光きすげ』。

黄色の華やかな6枚の花びら。花開く前には花弁は棒状

に閉じている。6枚の花びらは1枚づつじゅんを追って

咲いてゆく。他の花びらをきづつけないように配慮して

咲いてゆくのだ。この気遣いはどこに隠された能力、遺

伝情報なのか。

 神秘な能力はまだまだある。花びらは内にゆるく湾曲

している。この花に惹かれて止まってくれた虫はすべっ

て下に落ちないように配慮している。しかも花びらの色

は花の奥に行けば行くほど色が濃くなっているではないか。

 つまり虫が花粉のある花びらの中心に向かって誘導され

るようになっているのだ。驚くべき草花の秘めたる能

力!!