加能作次郎を読んだ

『厄』という小説を読んで感動した。芥川龍之介の『枯野

抄』に受けたと同じ衝撃を受けた。人の死に対する絶望、

悲しみ、恐れ、と希望、喜び、安堵を取り上げたことでは

双方同じ哲学であった。

 音楽好きの知人とたびたび論争したことだが音楽は芸術

ではない。あるいは芸術としてもレベルの低い芸術である。

なぜなら芸術は恋と死を追求するものだからである。音楽

は1次元の表現能力、絵画、彫刻は2次元、3次元の表現力

を持つので音楽に比べて絵画、彫刻は恋と死を多く語る

ことが出来る。そして文学は無限次元の表現力があるから

恋と死の極致が語れる。

 加能作次郎は明治末期から昭和初期に活躍した小説家。

珍しくも早稲田大学文学部出身である。日本の文学者は

ほとんど東大出身だ。森鴎外川端康成夏目漱石、太宰

治、谷崎潤一郎大江健三郎、そして芥川龍之介

 不思議なことに他の大学出身者はほとんどいない。そこ

で私は早稲田大学出身者として、この加能作次郎を挙げよう。